空き家リフォームの真髄
2015年05月25日 10:19少し前になりますが、恵那市内で行われた空き家リフォームプロジェクトのイベント2件に立て続けに参加してきました。
まず一つ目は三郷町より北側に位置する飯地町の「空き家と人生リフォーム塾プレイベント」に参加。空き家リフォーム講座は2年前、三郷町のあんじゃないの家の改修工事講座に参加した経験があるのである程度馴染みがある工程なのですが、個人的に「人生リフォーム」というフレーズに妙に魅かれてしまいました。あぁ、とんかちと釘で改修できる人生ならばどんなに良いことか…と一瞬思うなりけり。
木曽川を越えると恵那北部にはいります。あいにく写真を撮った時は曇っていたのですが、晴れた日の透きとおる緑色の木曽川に映る景色は最高に美しいです。
飯地町は山の中にある町で、通称「恵那のヒマラヤ」ともいわれるほど山ヤマしています。道は標高が高くなるにつれ細くなり、くねくね度もあがり次第に自分の運転にも酔ってしまい、目的地に着くまで少々心細くなるほどでした。開けた土地は少なく、人間が山に家や道路を置かせてもらいながら生きているようなイメージで、まさに山間の暮らしを満喫する場所という印象を受けました。飯地町ふるさと活性化協力隊の旦那さま曰く、飯地町は「田舎暮らし上級者用」だそうです。恵那市の中心部や買い物まで出るには少々不便かもしれないけど、それ以外の暮らしの不便さと向き合いながら解決法を探求して自然との共存を楽しむ暮らし方はまさに生きる術を学ぶ最高の経験だとのこと。そこまで悟りを開いているOさんに脱帽です。
下:山間の地形を見事に利用した茶畑や田畑。なぜか風の谷のナウシカを連想してしまいます。
空き家リフォーム塾は飯地町の建築士さんや大工さん、左官屋さんなど地元の技術者が講師となりリフォームのノウハウを教えてくださいます。今までお会いした大工さんや職人さんはどちらかというとシャイな方が多かったのですが、飯地町の方々は気さくにお話ができ、いつでもウェルカムな雰囲気を持っていました。人生リフォームのほうは田舎への移住についての調査や研究をされている名古屋大学環境学研究科の高野先生が地元の人や移住者の悩みの聞き役になってくれ、解決方法を一緒に考えて下さるそうです。全てを解決してくれるわけではありませんが、相談役といったサポートシステムがあるだけで移住したい人や移住者を迎え入れる地元の人は心強く感じると思います。
下:リフォームする物件の外観。道沿いに昔タバコ屋だった店舗が面しており、中庭的空間を介してその後ろに住居が廊下でつながっている。周りは住居や商業物件が並ぶ。
下:住居2階から店舗の後ろを見たらこんな感じ。
下:住居の裏には使用されていないお手洗いが別棟であり、その両脇に木々が茂っている。
参加者は愛知県内の方が多く、一番遠い所では東京都からみえた方もいらっしゃいました。参加理由の多くは古民家に住んでみたい、リフォームがどういうものなのか体験してみたいというもので、結構都会的な女性が多かったことに驚きました。以前に比べ近年は田舎暮らしというライフスタイルが魅力的になってきた証拠なのかもしれません。
下:昼食は皆で焼いたごへいもちとしし汁(イノシシと豚のお肉50:50)、そして地元の人が持ち寄ったお手製漬物の数々。麹イカなども美味しく頂きました。朴葉はお皿として使用。
飯地町の主催者側とは以前お会いしたこともあり、食事をしながら色々とお話しを聞くことができました。とにかく皆さん、気さくなうえ、しっかりとした信頼関係が築きあげられている間柄だということが一目瞭然でした。素晴らしい仲間で始めるリフォーム塾、応援しています!
第1回目リフォーム塾は6月13・14日です。
ご興味のある方はぜひこちらへ!
*****
二つ目に参加したイベントは古民家改修が終了した知り合いKさんの家のお披露目会。あんじゃないの家の改修工事作業を共にした講座生仲間が昨年隣町に長年放置されていた古民家を借りました。色々なところからつながりのある有志が手弁当で集まり、約10か月かけて家がかっこよく住める状態までになりました。
Kさんの凄いところは、信頼できる人脈がとにかく沢山あることです!私も何度かお手伝いに行きましたが、毎回行く度に新しい方とお会いしました。Kさんはあんじゃないの家だけでなく、恵那市で間伐材を切って森林を整備される団体や以前住まわれていたところのスポーツ団体に所属しており、その繋がりで知り合いが絶えず各地からリフォームのお手伝いに来ておりました。
チェーンソーを得意とする仲間たちは家の近くまで侵害してきた雑林を切り倒したり、床下の梁をチェーンソーで製材する見事な技を披露し、天井材を崩したりと大活躍でした。あんじゃないの家や他の古民家リフォーム講座に参加した経験のあるプロ・アマ職人さん達は今まで培った技術を最大限にKさん宅に応用されていました。なかでも大工の棟梁や建築家がプロならではの知識や経験を惜しみなく活用され、暑い日も寒い日も現場に通いつめ、リフォームには欠かせない存在でした。その他にもお隣さんがかなり貴重な助っ人となってみえました。自前の重機で古い小屋をあっという間に壊してくれたり、土地を整備してくれたり、個人的に仕事を頼んでいた設備業者さんにKさんを紹介し、色々と重要な時に物資の供給や技術的なお手伝いをしていただいたそうです。
下:ビフォー・リフォームの写真。ゆがんだ構造をジャッキで直した後床を貼り直し、雨漏りしていた屋根を直し、水回りを一新し、新建材の天井をぶち壊して従来の立派な梁を見せる空間にしたり、敷地まわりの雑林整備や放置されていた日本庭園の手入れなどを10か月かけて実行。私が初めて物件を見に行った日、室内でコウモリが飛んでいた。アフター写真は残念ながらないが、ここの写真からは想像できないほど見違えり住みやすくなった。
通常だと結構大がかりなリフォーム工事は業者さんにしっかりとした金額を払ってきちんとした仕事をして頂きます。そこを仲間意識と、恵那の古民家を「自らの手でリフォームして移住するぞ」という強い決心と熱意に翻弄されたから、手伝わないわけにはいかなかったと皆さんお披露目会で口を揃え言ってみえました。また「この子だけだったら心配だ」という気持ちにもなったそうです。きっとKさんが独身女性でベッピンさんだということもオジサマ方が集まった少なからずの理由だとは思うのですが、それでも10か月間気を緩めることなく、作業を毎日続けたKさんの本気の姿勢に皆が心打たれた結果が古民家のリフォーム完成につながりました。Kさん、気持ちよく住める家になり良かったですね!
行政などからの補助金やまちづくり団体に頼ることなく、Kさんの古民家リフォームでは理想に近いまちづくり活動が行われたことに驚きました。「まちづくり」という言葉が大々的になくとも、人は好きなヒト・コトの為に集まり、まちを活性化して自然とまちづくりができるのだと証明された経験でした。
*****
両方のイベントに共通するものは、
- 中心人物・団体が熱意をもって本気で取り組んでいる
- 良い仲間がいる、人が集まる
- たちどまらず行動している
以上の3点だと思います。
皆さんの周りに自然と人が集まったり友人が多い人気者がいましたら、一度なにげなくその方を観察してみてください。きっとその方は何らかのかたちでまちの活性化(まちづくり)に貢献されているのではないでしょうか。偶然出会った人との縁の大切さに気づき、その人を尊重することで信頼が生まれ、そのつながりを自分の為ではなく他の人の為に活かす。信頼をベースにしたネットワーク(コミュニティー)ができあがり、そのネットワークを元に人の為に動くことで何か役立つことにつながる。豊かな人間関係がまちづくりの根源にあってこそ、すてきなまちができるのだと2つの空き家リフォームプロジェクトから垣間見ることができました。
「小才は縁に出会って、縁に気付かず
中才は縁に出会って、縁を活かさず
大才は袖擦れ合う縁も、これを活かす」
徳川家剣術指南役・柳生宗矩の家訓
タグ:
—————