芸術文化が溢れる場所は輝いてる:琴平編

2015年04月16日 09:51

こんにちは、三郷町ふるさと活性化協力隊のmeganeです。

三郷町は天候がこの頃不安定です、現在は晴れていますがまだ風は肌寒く初春に逆戻りしたようです。

 

最近休暇を頂き香川県へ行ってきました。風邪をこじらせたままの旅行だったので体力的に大丈夫なのか不安でしたが、旅というものは5感に刺激を与え続ける要素が満載でアドレナリン効力があり、動き出せば何とかなってしまうことに驚きました。あいにく旅行中はほとんど雨で思い描いていた青い空と青い海に癒されたのはほんの一瞬でしたが、それでも見たことのない土地で新しい知識や感覚を得ることができ、とても充実した時間でした。

 

今回香川県で訪れた町全てに共通することはサイトスペシフィック・アート site-specific art: 特定な場所に存在するために制作された美術作品及び経過)といったような芸術的要素がまちの活性化の根源にあるということでした。建築やランドスケープも芸術的な要素を備えており、その場所の為に作られた作品であるためサイトスペシフィック・アートとみなします。香川県の随所に文化や芸術を推進し、根本にそのような創造性を重視した事業を企画・実行するリーダーの存在、キーパーソンとのご縁、創造性を発奮させる地域資源の再利用、そしてそういった活動を歓迎する町民がいることに大変感銘を受けました。もちろんまちづくり事業の規模はそれぞれ違いますが、それでも考えさせられる面が色々あり知らぬ間に勉強になっていました。どこかで「うどん県。それだけじゃない香川県」というキャッチフレーズの垂れ幕を目にし、今振り返ると本当にその通りだと思いました。

 

これから数日間にわたり1か所ずつご紹介し、私的な感想を書いていければと思います。

まずは琴平からスタートです。

 

琴平     

琴平は金刀比羅さんやお遍路さん以外に、「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が行われていることをつい最近知りました。毎年春の風物詩となっている「四国こんぴら歌舞伎大芝居」を見物するため、人口1万人弱の町に人口の何倍もの見物客が県内外・国外から15日間の開演期間を通して琴平を訪れます。町全体が歌舞伎色に染まり、琴平だけでなく香川県の経済に大きな影響力を与えるまでになったそうです。

写真:こんぴら歌舞伎オフィシャルサイトより

この大イベントの発端は1984年頃。オイルショックの影響で不景気になり観光がすたり、当時町民の70%が観光産業に関わっていたため次の観光資源を必死に模索していた時、テレビの企画撮影で歌舞伎俳優の中村吉右衛門、澤村藤十郎、中村勘九郎が1970年に芝居小屋として初めて国の重要有形文化財に登録された旧金毘羅大芝居(金丸座)を訪れました。江戸時代歌舞伎の全盛期を髣髴させる空間、歌舞伎の原点である観客と一体感のある芝居小屋で演じたいと建物に魅了された彼らの熱意と要望により、当時の文化庁、松竹芸能、その他の協力団体を交え沢山の問題を解決し復活事業を大成功させたそうです。1985年に第1回目を迎えてから継続的に活動することにより名誉ある賞を多数受賞し、今年で31回目を開催中です。

写真:こんぴら歌舞伎オフィシャルサイトより

ここでの公演は多くの町民ボランティアにより機能しています。耐震構造以外舞台は江戸時代のままで電機や機械が使用されないため、自然光の照明を窓の開け閉めで3段階に操ったり、人力で動かす回り舞台・せり・すっぽんなどの舞台装置を地元の商工会議所青年部が行われます。また、お茶子さんと呼ばれる黄色いはっぴを着た方々もボランティアで接客サービスや掃除などに取り組まれており、近年は県外からもお茶子さんとしてお手伝いに来てくれる方もいるそうです。

 

歌舞伎を鑑賞した友人たちに感想によると観客と俳優の距離がとても近く、言葉回しが半分以上分からなくても声の響き方や感情の表現力に迫力があるため演目の物語に吸い込まれそうになるそうでした。宿のお風呂場でも毎年20年以上ここでの公演を楽しみにしていらっしゃる歌舞伎ファンにお会いし、あまり歌舞伎のことを知らない私に他では体験できないこんぴら歌舞伎の良さを熱心に目を輝かせながら濡れた髪のまま教えていただきました。そういった長年のファンとお話しできたのも、本来なら金刀比羅本堂へお参りする方や四国八十八ヶ所霊場へお遍路をする人が主な宿泊者だったところを、歌舞伎座が復活したことにより歌舞伎ファンという新たな宿泊者層が増え、琴平の観光施設を窮地から救い出したからです。琴平に来ないと味わえない歌舞伎空間を再復活させた四国こんぴら歌舞伎大芝居という芸能文化はれっきとしたサイトスペシフィック・アートなんだなとしみじみ髪を乾かしながら思いにふけりました。

 

参照:

こんぴら歌舞伎のあゆみ

日本の劇場 ~歌舞伎芝居小屋に生き続ける民俗性~

近兼 孝休

 

追伸   

唯一気になったのは金刀比羅本堂へ向かう参道の両脇に長い距離のお土産屋さんが沢山並んでいたのですが、本シーズンでない為か日中でもシャッターが閉まっていたり活気がなく閑散としていてなんとなくさみしさが漂っていたことでした。夜は7時になると参拝に来る観光客がいなくなるため参道沿いのお店がほとんどしまっていまい、薄暗い中私の足跡のみが響く空間になっていてたので少し早足で宿へ戻りました。もしかしたらハイシーズンの時はもっと賑わいがあるのかもしれませんのであしからず。

—————

戻る