門松作り

2015年12月23日 11:38

皆様こんにちは、三郷町ふるさと活性化協力隊のmeganeです。

今回は野井地区の舟森山武並神社と佐々良木地区の常久寺にお邪魔し、門松作りの様子をそれぞれ見学させていただきました。

 

舟森山武並神社

まずは舟森山武並神社から。こちらでは毎年神社の当番は順番に地域の班が受け持ちます。今年の当番は中切班で、お祭りや行事、掃除などを班で行われました。今回は門松迎え(松を山から切って持ってくること)を数日前に行い、23日に手分けをし、神社境内の掃除と門松作りを同時進行で行われました。

下:境内の神殿前に飾られた門松

指定されていた時間より少し早めにお伺いしましたが、すでに時は遅し。その頃にはもうほとんど門松が完了しつつありました(**;)何事も早めに済ませようと努力される町民の姿勢は素晴らしい限りです。三郷で時間にルーズな方にお会いしたことはわずか数えるほどのみ...私も真剣に見習わなければなりません。(確かこのことについて以前記事を書きました)

 

さて、気を取り直して色々と門松についてお聞きました。武並神社ではこの地域に昔から伝わってきた形の門松を作ります。まず日が良い時に山から葉ぶりが元気でしなやかさがある若い新芽の赤松(雌松)を迎えに行きます。9がつく日や、一夜飾り、仏滅など縁起の悪い日は松のお迎えを避けます。そして枝の先を使用するのではなく、地面から生えている、幼い木を使います。松のお供にはそよごを使います。今年はそよごに赤い実がついていなかったため、なんてんで赤色をアクセントとして加えます。よく見かける斜めに口が切ってある竹はこの地域では使用しません。そして、そよごの高さに合わせて松の高さをここでは調整しました。

固定方法は、まず地面にそよごやこならなどの木で杭打ちをします。その杭にそよごと松の木をおさえ、その周りにわら縄を2度回してから垣根結び(男結びともいう)という特殊な結び方で固定します。普段使わない結び方なので、習得するのに10年はかかると冗談(?!)を言われました。結び目は参拝者の方に向けます。

 

左下:杭が支えとなっている

右下:垣根結び。慣れていないとゆるんでしまるのだそう

境内の他にも鳥居の前で門松が1組作られていました。あしのふもとに綺麗な見栄えの良い土を盛り、竹ぼうきで手跡を消します。こういった作業や工程は何度も門松を作られた経験がある人生の先輩方から次の世代に受け継がれています。通常だと本やインターネットなどで情報を何とか形にしますが、三郷町には生活の賢者が多くいるので色々と教えていただけることにとても感謝しています。

人の手によって作られましたが、どこか自然に生えているようにも見える、地方の門松の素朴さにとても今回魅かれました。

 

常久寺

午後からは佐々良木の常久寺で行われる門松作りを視察してきました。こちらは舟森山神社のような地元の形ではなく、世間が思い浮かべる王道の門松を作られました。また、門松以外にも宗教的に重要な場所と俗世を分ける結界を同時に作成されました。製作作業は今年度のお寺の役員の方々によって行われました。

立派な竹は事前にFさんの竹林(以前筍堀りに行った山)から4人がかりで切り運んでありました。大体2年物の青い竹でまだ節に白っぽい色が残っているものを選択するそうです。竹の中は空洞になっていますが、それでも結構重いです。

まずは門松作りの方から手順を追います。斜めに切ってある竹の切り口(そぎ)の表面をカンナにかけ、滑らかに仕上げます。その横では半分に切ったむしろをドラム缶に巻いていました。

こちらでも結び目は舟森武並神社と同じ垣根結びで、同じく2箇所結びをつけていました。むしろが固定された後は、ドラム缶より上のむしろの部分を外に折り曲げていました。どうしてなんだろうと観察していたら、ドラム缶を上下反対にして納得しました。

地面と門松との連続性ができました。ふもと部分の出来上がりです。

笹竹が必要ということで、お寺の裏に回り笹を刈って集めました。

しばらくすると竹の切り口が全てきれいになりました。違う高さの竹3本をドラム缶の真ん中に立て、細い針金で動かないようにまとめて固定します。そして竹が倒れないように、ドラム缶に土を敷き押し詰めます。土で埋まったら、松の木は竹の後方に、梅の枝は横の方に、なんてんの枝な竹の前方に挿し、そして残った隙間に先程刈りとってきた笹を隙間が無くなるまで足します。終いには先程のむしろのように、竹3本に黒いシュロ縄を巻き、垣根結びを2か所作ります。

生け花をやった経験がある方はお分かりだと思いますが、植物を生けるセンスはなかなか取得できるものではありません。何度も練習を重ねて、それぞれの生け花の良さを最大限に引き出せるように邁進する努力や感性が必要です。佐々良木の男性方は淡々と飾り付け作業を進めていき、いつの間にか美しい門松が左右ワンセットできあがっていました。そんなことが無理なくできてしまう技術に感心してしまいました。

近くから見ても、遠くから見ても、とても素敵な門松の出来上がりです。竹の切り口が笑っているような顔に見えてほっこりした気分になります。

さて、門松はできましたが結界作りが意外と難航していました。竹に穴を開け、竹の部品を組み立てるまでは順調に進んでいましたが、今回集まった集の中でシュロ縄を特別な結び目で巻いた経験者はだれ一人いません。結び目の名前や由来を知り方もいませんでした。そのため、今年まで使用されていた結界の結び目を見本とし、何度も見たり外しては観察していらっしゃいました。

 

下:竹を組み立てる。穴に差し込むピースも竹を切って作られました。

でもやはりわからない箇所があると横からあーでもない、こーでもない、とそれぞれが正しいと思う意見やジョークが混じりながらが次々と飛び交い、トライアル&エラーの繰り返しでした。そしてようやく何とか結び目の形が見本のものに真似ることができました。結界は全部で3個、一つにつき結び目を2つ作る必要があります。結ぶ部分で1時間以上かかりましたが、皆さんの諦めない努力のおかげでしっかりとした大きく背の高いな結び目ができました。

 

下:なんとか2つの竹筒を6本のシュロ縄で固定することはできましたが、結び目がどういうふうなのか誰も分からず苦戦されました

左下:前回作られた結界の結び目をほどいたりしながら何度も確認。

右下:何とか形になってきました

左下:できました!

右下:お寺の垣根にも似た様な結び目を発見

あとで調べましたが、この結び目はおそらくとっくり結び(またの名をねじりいぼ結び)かと思われます。(間違っていたらすみません)金閣寺垣などの竹垣の一番上に取り付ける玉縁(たまぶち)に使用されており、なかなかほどけることのないため縁起が良いとされる男結びのアレンジなのだそうです。

参照:造園初級技能の手引

役員の方々にとってはなかなかわからない作業で大変だったと思われますが、傍から見ている限りではワンヤワンヤと漫才みたいでとても面白いシーンでした。旧知の仲だからできる掛け合いなのだと思います。

 

できあがった立派な結界をお寺の必要な場所に置き、常久寺から美味しいお茶の差し入れを頂きました。ありがとうございました。そして皆様お疲れ様でした!

その他

今回は二か所の門松を比べてみましたが、それ以外にも飾り方は色々あるようです。いつもおもしろい昔の生活文化などのお話をしていただいているK館長さんのお宅では男前な飾り方の門松を毎年作られています。使用される松やそよごは舟森山神社といっしょですが、こちらはそよごでなく、松を中心に立てています。松の枝が勢いよくついているので豪快さが出ているのが特徴的です。

そして今朝、「66号沿いから野井トレーニングセンターに向かう道の入り口付近に大きい門松がある」と情報を頂き早速見に行きました。66号線を運転しているとおもわず門松の大きさに驚いてしまうほどのインパクトでした。写真を撮るのにも、道を渡らないと一組上手に映りません。あとで知りましたがあとで知りましたが一番高い竹の高さは3メートルを越しています。

 

この他に野井公民館などにも門松を設置されたのは地元の野井山造りの会でした。山の整備に力を入れている団体で、間伐した木や竹を再活用したりチェーンソーの使い方や間伐の大切さなどを広めていらっしゃいます。3年ほど前から間伐した竹の再利用として地元の野井に門松を作り始められました。特に県道沿いの門松はスケールが大きいので、なんてんや松の木枝ぶりがワイルドだなぁという印象が強いです。大きなハボタンまでもが飾り物になっています。これなら歳神様は迷わず野井区に来て頂けることでしょう。

下:東濃版中日新聞 12月25日付けの記事

思うこと

今回取材をしてわかったことは、門松は新年に1年の幸せを運ぶ年神様(正月様)が各家庭に来てくれるよう、「寄る場所ですよ」という目印なのだということからでした。門松の松にどうやら年神様は宿るので、竹は本当はそんなに必要な要素ではないみたいです。その年神様を迎えるために年末の大掃除を行い、家に福が来るよう年神様のご神体となる鏡餅やお供え物のおせち料理など準備をしていました*。現代では年神様のお話は聞くことはありませんが、年末に家の大掃除をすることは続いています。

 

そうしてお正月の日の出で年神様が降臨します。野井区などでは1月4日に「なんまいだ」といいながら子供たちが門松やお札などを各家庭から引き取りに来る儀式があり、1月10日のどんど焼きで門松などに火をつけて、天に上昇する煙と共に年神様が天に戻られます。そんな素敵な物語がお正月にはあったこと、初めて知りました。今年初めに佐々良木地区のどんど焼きに参加させていただきましたが、ようやく全ての行事が私の中でつながり、理解ができました。

 

私は集合住宅での暮らしがほとんどだったため、今まで門松を作ったことや飾ったことはありません。街に出てデパートや神社などに飾られたものを見たことはありますが、「立派だなぁ~」としか思ったことがありませんでした。東濃地区に越してから親戚が毎年門松を手作りしていることを目にしたのが最初の身近な門松です。今回こんなにたくさんの門松や門松の由来を知ることができ、とても勉強になりました。取材を受け入れて頂いた野井の舟森山武並神社と佐々良木の常久寺の関係者には大変お世話になりました。本当に心から感謝いたします。

 

近年では門松の後処理に困る地域が増えているため、門松自体を作らない家庭が増えていると聞きます。実際に門松の絵(写真)を玄関先に貼る所もあることを知りました。確かに目印にはなるかもしれませんが、やはり簡素化された2Dの印刷物より心がこもった本物の門松の方へ年神様は好んで向かうような気がするのは私だけでしょうか。個人的には門松の心配をする前に、まずは人様が入れる状態まで家の大掃除をしなければなりません...。

 

2015年はもうあとわずか。読者の皆様、今年もブログを読み続けていただき本当にありがとうございました。

良い新年をお迎えください! Happy Holidays!!

 

*お正月にやってくる「年神様」とは

 

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