灰汁を作って思ったこと

2015年12月11日 14:22

こんにちは、三郷町ふるさと活性化協力隊のmeganeです。

 

昨晩から三郷町では強い雨や風が吹き荒れ、12月とは思えないほどの生温かさとなっています。建物の中の方が外より寒い冬は初めての体験です。数日前までは毎朝マイナス-4,5°の世界だったのに今朝はジャケットが必要ないほどで、名古屋ではあまりの暑さでクーラーまでつけたという情報も耳に入りました。一体全体どうしたのでしょうか。

 

さて、13日はこんにゃく作りのイベントの準備の為、天候が崩れる前にイベント会場に必要な畳やじゅうたんをいつもお世話になっているFさんと先日一緒に干しました。外に干してもいっこうに太陽が顔を見せてくれなかったので、Fさんが機転を利かせて室内で干すことになりました。

「大豆の灰汁で作るこんにゃくは今までに食べたことがないほど絶品なのよ」という会長の一声から実現したこんにゃくの為の大豆作り。大豆は何とか無事に収穫できましたが、大豆の灰汁をこんにゃく作りに使用する先生が体調を崩されてしまい、他の講師は一般家庭で手に入りやすい水酸化カルシウムをこんにゃく作りに使用されるため、今回は大豆の灰汁は残念ながら出番なしとなってしまいました。

 

個人的には昔ながらの自然の恵みを使うこんにゃく作りにとても興味があり、灰汁の作り方も手間暇がかかるかもしれないけど一度は体験してみたかったので、じゅうたんや畳が干すのを待つ間、保管してあった大豆の籾殻から灰汁を作ってみることにしました。作り方はこちらを参照しました。

 

<灰を作る>

昔ガスが普及していなかった頃、どこのご家庭でもおくどや囲炉裏などで乾燥したわらや大豆の籾殻などに火をつけて焚いていたため灰は日常生活に欠かせないものでした。また、灰は世界最古の石けんとも言われ、昔は洗剤としても利用されていたそうです。年月が経つにつれ生活はがらりと変化し、くどはガスや電気コンロに、囲炉裏はストーブやエアコンに変わっていきました。科学や技術が発達した現代社会において灰が必要とされるシーンはほとんどなくなってしまいました。

 

当たり前にあった灰をこんにゃく作りに使用していた頃と、こんにゃく作りに必要な灰汁を作るために、必要な灰を一から作らないといけない今では灰作りにかけていた手間暇や貴重度が全然違います。たかが灰、されど灰。けっして侮ってはいけない大切なものだったということを今回灰作りを体験して知りました。

 

さて、まずはトタン板を地面に敷き、その上に少量の大豆殻を乗せます。そして火をつけてどんどん殻を燃やします。乾燥してあるので、とてもよく燃えました。灰汁の作り方に必要な灰の量は書いてありますが、実際にどのくらい殻を燃やせばよいのか全く分かりませんのでとりあえず倉庫に入れていたものすべてを灰にしました。

一通り火の炎が落ち着いたので終了かと思いきや、灰山の中はまだ黒い炭で火が赤くくすぶっていました。ここでFさんが気づきましたが、こういう場合は最初から煙突を立て、中まで空気がきちんと循環しきちんと黒い炭も白い灰に変わるまで燃やし続けなければいけないとのこと。早速トタン板を丸めて簡易煙突を作っていただきました。その煙突を2つのレンガの上に立て、下から空気が上へ上昇する仕組みを作りました。作業を始めてから約6時間後、ようやくほぼ白い灰だけの山ができました。

 

<灰を煮て、漉す>

今回は灰375ℊと水2.25ℓを火にかけ、沸騰するまで煮ます。煮立った灰水は1日分の新聞をのせたザルで一晩かけてこします。1日分の新聞紙はとても細かいフィルターとなって灰と水分をゆっくりと分離します。他のやり方では一晩煮立った灰水を放置することにより灰や異物がバケツの下まで沈殿し、うわべの灰汁をすくって使用するそうです。

1日たった今日、どれだけの灰汁ができたか見てみると、ほんの少量しかありませんでした!どうやら新聞紙にほとんど水分が吸われたみたいです。もったいない精神で新聞紙を絞ってみましたが、水分が絞り出てくる前に新聞紙が破れはじめ、灰が出てきてしまったので諦めることにしました。でも想像していた黒い水とはかけ離れたとても綺麗な山吹色だったのでびっくりしました。

この原液にぬるま湯2.25ℓをいれて薄めたら、綺麗な透きとおった灰汁のできあがりです。多分2,2.5ℓはできたと思います。オンラインで調べたレシピによると、1キロのこんにゃく芋に対し2合(360ℊ)の灰汁が必要ですので、6キロ分のこんにゃく芋に対応できる量ができました。

この灰汁の為に費やした時間は約1日半。無駄な努力と思われるかもしれませんが、実際に作ってみることにより人から聞いたり本で読ので得る情報よりも、5感で体験できた確かな記憶となりました。また、灰汁作りは残念ながらどこでもできるわけではありません。火が焚ける場所があり、大豆の殻やワラを燃やしても近所迷惑にならない事が前提です。そして何より大豆の殻やワラを入手することが必要です。そういう意味でも灰汁作りは貴重な体験でした。

 

<無駄のない生活>

昔お米を田んぼで作る際、稲を収穫してはざ干ししていました。手間はかかりますが天日干しすることでお米のうまさが凝縮されるうえ、乾燥した稲はワラとして縄やぞうり、農作業に必要な道具の材料、そして茅葺の屋根の材料として重宝されていました。

 

土の栄養分をあまり必要としない大豆も田んぼ周りのあぜに植え、とても合理的な土地の有効活用が行われていました。若い豆は枝豆として収穫し、残った豆はカラカラになるまで残しておけば大豆になります。大豆はそのまま食べられるだけでなく、みそや豆腐、豆乳やきな粉などの加工食品に変身します。

 

そして残ったわらや大豆の籾殻は火の焚きものになり、灰になっても洗剤やこんにゃく作りに必要な材料として大切にされていました。生物を何段階にも渡り上手に活用し、最後まで無駄を出さない昔の人の暮らしはエコシステムそのものでした。先人の知恵に脱帽です。

 

驚くほど合理的で無駄のない昔の人の知恵は近年忘れられてきているのが現状です。現代に通じる昔の暮らしの知恵は少しでも復活させたり、最新技術と融合し社会に再認識していただければと願います。

 

<余談>

先日道沿いの看板がいつもと違う風に見えたので近づいてみたら、看板に穴が開いて後ろの景色が見えていました。私があんじゃないの家に関わってからはや3年も経ったんだなぁと劣化した看板を見ながらふと思いました。

リフォームは内装で止まったままでこの先どうなるのかわかりませんが、まだまだ建物として進化する余地は沢山あります。(この看板も直していただきたい)ソフト事業ではあんじゃないの家で交流会やレンタル空間、他市からの視察、機織り機修繕作業、藍染め体験、農業体験、そして今回行われるこんにゃく作り体験などの郷土に根付いた体験を行いました。それらの体験から沢山のことを学び、沢山の方お会いすることができました。

 

色々思うことはありますが、もっと多くの方にあんじゃないの家を活用していただき、色々なことを体験して頂けたら幸いです。

 

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